◼相続人と相続財産
相続に際してはまず以下の①、②を行う必要があります。
①どの財産を相続しその財産がいくらになるのかという財産調査
②誰が相続をするかということを確定する相続人調査
誰が相続人なのか?
相続人が誰となるかは民法で決められており、遺言や死因贈与でなければ相続人以外の人が相続財産を取得することはありません。
・配偶者:配偶者(夫、妻)は常に相続人になります。
・子(養子含む):第一順位の相続人。相続開始の時点で子が死亡してしまっていて、且つ代襲者がいる場合は、代襲者(亡くなった人の孫)が第一順位の相続人になります。
・直系尊属:第二順位の相続人。直系尊属のうち、生きている者でもっとも親等が近い者が第二順位の相続人になります。
亡くなった人に子または子の代襲者がいる場合は、直系尊属は相続人にはなりません。
・兄弟姉妹:第三順位の相続人。
兄弟姉妹が死亡してしまっている場合は、その子(甥、姪)が代襲して第三順位の相続人になります。
なお甥、姪が亡くなっていてもその子は相続人になりません(民法889条2項が再代襲に関する同法887条3項を準用していないため。)。
亡くなった人に子または子の代襲者ないし、存命の直系尊属がいる場合は、兄弟姉妹及びその代襲者は相続人にはなりません。
配偶者と子以外の相続人は、配偶者、子・養子がいない場合にのみ相続人になります。
そのため、配偶者以外の人が実際に相続人として相続に関係する場合は、以下の形しかありません。
【配偶者がいる場合】
・配偶者のみ
・(配偶者と)子・養子(代襲相続人を含む)
・(配偶者と)両親(または一番親等の近い直系尊属)
・(配偶者と)兄弟姉妹(含甥、姪)
【配偶者がいない場合】
・子、養子(代襲相続人を含む)のみ
・両親(または一番親等の近い直系尊属)のみ
・兄弟姉妹(代襲する甥、姪を含む)のみ
つまり、遺言による場合は別として、法定相続であれば、被相続人の子と被相続人の両親といった組み合わせや、被相続人の両親と被相続人の兄弟姉妹といった組み合わせはあり得ません。
相続人の確定は相続を円滑に進める場合には必須の条件であるといえます。
まずは、相続人を確定する事が最優先事項であるといえます。
【相続人の特定方法 】
法定相続の場合、亡くなった人の身内が相続人となることから、相続人の確定を不要と考える方も多くいらっしゃいます。
ただ、後々亡くなった人に隠し子がいることが分かり、遺産分割が終わってほっとしているときに突然相続分を主張される紛争になる例は実は結構あります。
そこで、遺産分割をする前に、相続人が誰であるかをきちんと調べる必要があるのです。
相続人が誰かを確定するためには、亡くなった方の「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍」等を出生から死亡まですべて取得します。
相続人の調査は簡単と思われがちですが、相続人が思っていた以上に大変なケースは多々あります。
また、相続人調査は相続する方を確定するという、相続手続の大前提となる作業のため、相続人が後々増える場合には大きな影響を及ぼす場合があります。
隠し子のケースだけでなく行方不明の兄弟が見つかったり、後に想定をしていなかった所から相続人が居たことが判明し、相続手続きが最初からやり直しになる場合も多々あります。
相続人調査は専門家に依頼をする等、入念かつ正確に実施することをお勧め致します。
【相続財産の調査 】
相続に際しては、相続人は相続したい財産、都合の良い財産だけを相続するということはできません。
資産(プラスとなる財産)を相続する場合には、負債(マイナスとなる財産)も当然の事ながら相続しなければなりません。
なお、負債は借入金だけでなく、不法行為に基づく損害賠償請求権や債務不履行に基づく損害賠償請求権といった損害賠償責任も含まれます。
資産よりも負債が圧倒的に多い場合には、家庭裁判所に「相続放棄」を申請することで、負債を放棄することができます。
相続放棄には相続開始を知った3ヶ月以内に家庭裁判所に申述術する必要があります。
この申述期間は法律で決まっているものですので、相続開始から遅くとも3ヶ月以内には、相続財産を調査し相続財産全体でプラスかマイナスかの判断をしなければなりません。
相続財産には3種類あり、相続財産(遺産分割の対象になる財産)、みなし相続財産(相続税の課税対象になる財産)、祭祀財産(相続財産にも、みなし相続財産にもならない財産)があり、それぞれ取り扱い方が違います。
相続財産の種類毎の違いを理解し、適切な取り扱いをすることが重要です。