8月2日 鴻鵠の会の勉強会で、「インフレ率2%目標と今後の消費税増税の行方」について講義してきました。
内容は下記になります。
今回はまず、アベノミクスについて否定的に検証した「偽りの経済政策‐格差と停滞のアベノミクス」(服部茂幸)と肯定的にとらえた「アベノミクスは進化する‐金融岩石理論を問う」(原田泰・片岡剛士・吉松崇)の本をベースに考察をしました。
① 「偽りの経済政策」の主な主張
基本的にアベノミクスに批判的なスタンスで、インフレ目標によって経済をよくしようとするリフレ派を批判しており、日銀の黒田総裁に対しても批判的なスタンスである。
主な主張は下記になります。
・インフレ目標2%達成ができずに、時期を後ろに何度もずらしている。つまり、結局、異次元緩和より、当初予定していたインフレ率2%を達成できず、失敗であったといえる。
・当初のインフレは円安による輸入インフレの結果に過ぎない。現在はこれ以上の円安効果は見込めずインフレ率の上昇は止まっている。
・消費税増税が経済の回復に水を差したのではない。駆け込み需要と政府支出でかさ上げされていた経済が元に戻っただけである。
・雇用の回復が謳われるが、実は増加しているのは短時間就業者であって、長時間就業者は逆に減少した。
・延べ就業時間は微減か横ばい程度であり経済が良くなったとは言えない。
・低金利や住宅ローン減税などの政策により、住宅投資が進んだことにより当初、景気の上振れ要因となったが、住宅ローンを早めに抱えた世代が、ローンの支払いにより今度は消費を抑制する結果となっている。
・円安による利益は輸出をする大企業に大きな経常黒字をもたらしたが、それが、賃金や設備投資には回らずに、内部留保として蓄積されただけである。
・アベノミクスにより恩恵を受けたのは巨大企業だけで中小企業にはその恩恵は及んでいない。
・輸入インフレと短時間労働者の増加により1人当たりの実質賃金はむしろ減少している。
・結果としてアベノミクスによる経済は停滞をしており、また、大企業の利益と株高と資産インフレにより富裕層に恩恵はあるものの、一般庶民には実質賃金が減少して、むしろ生活は苦しくなっている。実感なき景気回復といわれる実感のなさ、は多くの人にとって事実である。
といった具合で、かなり手厳しくアベノミクスと日銀の異次元金融緩和を行った黒田総裁を批判しています。
いわゆるインフレ目標2%をめざして、緩やかなインフレを起こしながら景気の回復に導くというリフレ派に対して徹底的に批判をしているというスタンスでした。